セルフメディケーション税制とは、健康診断など健康のために一定の取り組みをしている人が対象の市販薬(OTC医薬品)を購入した際に、その購入費用について医療費控除の特例として所得控除や減税の効果を受けられる制度です。
セルフメディケーション税制を利用して確定申告をすると、所得税の一部が還付される、翌年度の住民税が一部軽減されるといったメリットがあります。
対象になる条件は?
セルフメディケーション税制を利用するには次の3つの条件を満たしている必要があります。
- 所得税・住民税を納めている
- 以下のいずれかを受けている
- 予防接種(定期接種またはインフルエンザワクチンの予防接種)
- 定期健康診断(事業主検診)
- 定健康診査(メタボリックシンドローム検診)、特定保健指導
- 健康診査(人間ドック、各種検診等)
- 市区町村が実施するがん検診
※自費での健康診断は対象になりません
- 1年間(1月1日〜12月31日)に対象のOTC医薬品を購入した合計額が12,000円を超えている
対象になる人と金額は?
自分(申告者)だけでなく、自分と生計を一にする配偶者や親族のために支払った対象のOTC医薬品を医薬品の購入費も対象となります。
対象のOTC医薬品は?
OTC医薬品は、薬店・薬局やドラッグストアなどで処方箋(しょほうせん)なしに購入できる医薬品のことです。(OTC医薬品について詳しくはこちらをごらんください)
すべてのOTC医薬品がセルフメディケーション税制の対象として指定されているわけではなく、医療用医薬品でも使われている成分を含む一部の品目が対象となっているため、購入の際は注意が必要です。
対象商品の見分け方
セルフメディケーション税制対象となるOTC医薬品の多くには、商品の外装に以下のような共通識別マークが記載されています。そのため、ひとつの見分け方としてはマークが記載してあるがどうかを参考にすることができます。
しかし、マークの掲載は義務化されているわけではないため、マークが付いていなくてもセルフメディケーション税制の対象である場合があります。
セルフメディケーション税制の対象品目は随時増減するため、現時点でどのOTC医薬品が対象になっているかを知りたい場合は、以下厚生労働省の「セルフメディケーション税制対象品目一覧」を確認することをおすすめします。
医療費控除との違いは?
医療費控除は医師の診察や治療にかかった費用、通院にかかった交通費、処方薬の購入費など幅広い費用が対象になります。一方、セルフメディケーション税制は適用範囲が対象となるOTC医薬品の購入費に限られています。
医療費控除とセルフメディケーション税制の主な違いは以下のとおりです。
医療費控除 | セルフメディケーション税制 | |
---|---|---|
控除対象者 | 自分を含む「生計を一にする」家族・親族の医療費等 | 自分を含む「生計を一にする」家族・親族のために購入した、対象のOTC医薬品の購入費 |
控除額の対象となる金額 | 10万円を超えた金額※ | 12,000円を超えた金額 |
最大控除額 | 200万円 | 88,000円 |
※その年の総所得金額が200万円未満の人は、総所得金額等の5%の金額
医療費控除との同時利用はできない
セルフメディケーション税制は、通常の医療費控除の特例措置として認められている制度です。したがって、医療費控除とセルフメディケーション税制の同時利用はできず、いずれか一方を選択して利用する必要があります。
つまり、セルフメディケーション税制を利用する場合は医療費控除を受けることができず、医療費控除を利用する場合はセルフメディケーション税制の適用を受けることはできません。
確定申告の際は、セルフメディケーション税制か医療控除のどちらかを選びましょう。
医療費控除とセルフメディケーション税制はどちらがおトク?
確定申告時に医療費控除とセルフメディケーション税制のどちらを選べばよいかは、その年にかかった医療費やOTC医薬品の購入費などによって変わります。
医療費控除を受けるほど病院に行くことはないけれど、市販薬で治療することが多いという人にはセルフメディケーション税制の方が控除額が大きくなる可能性が高いです。
正確にどちらの控除額が大きいかを調べたい場合は、以下の計算式をもとにして実際の控除額を算出し、比べてみることをおすすめします。
計算式 | |
---|---|
医療費控除 | 控除額(最高200万円)=実際に支払った医療費の合計額-(1)-(2) |
セルフメディケーション税制 | 控除額(最高88,000円)=実際に支払った対象のOTC医薬品の総額-保険金などで補填される金額-12,000円 |
(1) 保険金などで補填される金額
(2) 10万円(その年の総所得金額が200万円未満の人は、総所得金額等の5%の金額)
※国税庁「医療費控除とセルフメディケーション税制の違いについて」を元に作成
セルフメディケーション税制の申請でどのくらいトクする?
申請したい年の1月1日から12月31日の間に、対象となるOTC医薬品の購入費として合計12,000円を超えて支払った場合、購入費のうち12,000円を超えた金額が課税所得額からの控除の対象となります。ただし、控除額の上限は88,000円です。
なお、住民税については、セルフメディケーション税制の控除により減税された金額は還付されるのではなく、翌年度の住民税の負担額から差し引かれる形で反映されます。
控除額の計算例
購入費 | 20,000円 | 100,000円 |
---|---|---|
控除額 | 8,000円(=20,000円 - 12,000円) | 88,000円(=100,000円 - 12,000円) |
所得税の減税額 | 1,600円(=8,000円 × 20%) | 17,600円(=88,000円 × 20%) |
住民税の減税額 | 800円(=8,000円 × 10%) | 8,800円(=88,000円 × 10%) |
減税額の合計 | 2,400円 | 26,400円 |
※所得税率・住民税率は人により異なります。
※実際の減税額は、その年の所得控除額によって変わるため、上記はあくまで参考値です。
申請方法は?
セルフメディケーション税制による医療費控除を受けるためには確定申告が必要です。
セルフメディケーション税制の適用に必要な事項を記入した確定申告書を税務署に提出してください。
また、確定申告書の他に「セルフメディケーション税制の明細書」「健康診断などの一定の取組を行ったことを明らかにする書類」といった2つの書類を作成して提出する必要があります。
いつ購入した分が今回の確定申告の対象になるの?
セルフメディケーション税制を適用した確定申告をする際に必要な書類は次の3つです。
- 確定申告書
- セルフメディケーション税制の明細書
- 健康診断などの一定の取組を行ったことを明らかにする書類
確定申告書の作成方法
通常の確定申告時に記入する項目に加えて、医療費控除の項目に必要事項を記載する必要があります。
セルフメディケーション税制を適用したい場合は、医療費控除の区分欄に「1」と記載し、適切な控除額を記載してください。(購入費ではなく控除額です)
確定申告書の作成方法について詳しくは、以下の記入例をご確認ください。
セルフメディケーション税制の明細書の作成方法
2017年分の確定申告から、セルフメディケーション税制の申請には明細書の添付が必要になりました。しかし、これまで必須だった購入費の領収書の添付または提示は不要となりました。
確定申告時は明細書を記入し、確定申告書に添付して提出してください。
ただし、明細書の記入内容を確認するため確定申告期限等から5年間、税務署が領収書の提示または提出を求める場合があるので、領収書は自宅で大切に保管してください。
明細書のフォーマットと記入例は以下をご確認ください。
健康診断などの一定の取組を行ったことを明らかにする書類
セルフメディケーション税制は、健康診断などの健康に関する一定の取組を行った人が所得控除を受けることができる制度です。
そのため、確定申告時には「健康の保持増進および疾病の予防への取組を行っている」ことを証明する書類の提出が必要です。
提出が必要な書類は以下のいずれかです。
※1上記の記載のある領収書や結果通知表を用意できない方は、勤務先または保険者に一定の取組を行ったことの証明を依頼し、証明書の交付を受け、その証明書を確定申告書に添付または提示する必要があります。
詳しくは以下の厚生労働省HPに記載している「一定の取組の証明方法について」をご確認ください。
その他の注意事項
通常の医療費控除またはセルフメディケーション税制による医療費控除のために確定申告をする場合、ふるさと納税のワンストップ特例を使用することができません。
医療費控除またはセルフメディケーション税制による医療費控除を受けるために確定申告を行う場合は、ワンストップ特例を申請した後であっても、ふるさと納税を行った全ての金額を寄附金控除の計算に含めて確定申告をしてください。
一定の取組 | 必要書類(以下のいずれか) | ||
---|---|---|---|
予防接種 | 領収書(原本) | ||
予防接種済証(原本) | |||
定期健康診断(事業主検診) | 健康診断の結果通知表に「定期健康診断」または「勤務先名称」の記載がある場合 | 結果通知表(コピー可) | |
健康診断の結果通知表に「定期健康診断」または「勤務先名称」の記載がない場合 | 証明依頼書※1 | ||
特定健康診査(メタボ検診)、特定保健指導 | 結果通知表に「特定健康診査」または「保険者名」の記載がある場合 | 領収書(原本) | |
結果通知表(コピー可) | |||
結果通知表に「特定健康診査」または「保険者名」の記載がない場合 | 証明依頼書※1 | ||
健康診査(人間ドック、各種検診等) | 領収書や結果通知表に「勤務先名称」または「保険者名」の記載がある場合 | 領収書(原本) | |
結果通知表(コピー可) | |||
領収書や結果通知表に「勤務先名称」または「保険者名」の記載がない場合 | 証明依頼書※1 | ||
市区町村が実施するがん検診 | 領収書(原本) | ||
結果通知表(コピー可) |